ポルシェ 911 カレラ2 タイプ964 タルガ
「12ヶ月点検をお願いしたい」とご来店いただいたY様の964タルガ。オイル漏れやエアバッグ警告灯など、いくつかの不安要素を抱えてのご相談でしたが、点検を進めていくと予想外の重要な不具合が隠れていました。もしも発見が遅れていたら…。定期点検の大切さを改めて実感させられた事例です。
前職からの長いお付き合い・Y様からのご相談
以前よりJスクエアをご利用いただいている、渋谷区在住のY様からご相談をいただきました。
お話をうかがうと、「オイル漏れが気になるし、エアバッグ警告灯も点いているので、12ヶ月点検をお願いしたい」とのこと。
Y様とは前職時代からの長いお付き合いをさせていただいております。
今回ご入庫いただいた964タルガは、約4年前にエンジンオーバーホールもさせていただきました。
12ヶ月点検で発見された症状
12ヶ月点検を進める中で、Y様がお話しされていた症状を確認していきました。
Y様からご相談いただいた症状:
- タペットカバー等からのオイル滲み
- エアバッグ警告灯点灯
- オーディオの電源が切れない
オイル滲みについては、空冷ポルシェでは比較的よく見られる経年劣化による現象で、現状では大きな問題となるレベルではありませんでした。
エアバッグ警告灯は調べてみた結果センサー異常が疑われる状態でしたが、Y様のご要望もあり今回は応急処置的にテスターで警告灯のリセット作業のみ行い、センサー交換は次回の作業とすることになりました。
オーディオの電源系統については今回のお預かり中には症状が確認できなかったため様子を見ていただきます。
点検中に発見された予想外の不具合
点検を詳しく行ったところ、Y様のご相談内容とは別の問題が見つかりました。
新たに発見された異常:
- ファンベルト切れを検知するセンサー部品内のベアリングが劣化により自然破損・飛散していた
- 破損の影響でファンベルト自体が削れていた
空冷ポルシェのファンベルトセンサーとは?
空冷ポルシェには、ファンベルトの状態を監視する専用センサーが装備されています。ベルトが正常にかかっているときはセンサーがON、ベルトが切れたり外れたりするとセンサーがOFFになり、メーター内の「ファンベルト警告灯」が点灯する仕組みです。
このセンサー部品内のベアリングが破損して飛散し、その破片がファンベルトを削っていました。


空冷ポルシェにおいて、ファンベルトは冷却ファンを駆動する極めて重要な部品です。このベルトが切れてしまうと、エンジンの冷却ができなくなり、最悪の場合はエンジン焼き付きという深刻な事態を招きかねません。
実施した作業内容
状況の深刻さを踏まえ、以下の作業を実施いたしました。
主要作業:
- 12ヶ月点検の実施
- エアコンベルト、オルタネーターベルト、ファンベルトの3本すべてを新品に交換
- 破損したセンサー部品の交換
- エアバッグ警告灯リセット
ベルト類は、一本に異常が見つかった場合、他のベルトも同様の劣化が進んでいる可能性が高いため、予防的な観点から3本同時交換を実施しました。
エアバッグ警告灯については、センサー異常の根本対処は今後の検討事項として、今回は警告灯の消去のみを行いました。
作業完了後のY様の反応
作業完了後、Y様には今回発見された問題について詳細にご説明させていただきました。
「最初に思っていた不具合とは違ったけど、ベルトが切れる前に気づいて交換できてよかったよ!」とのお言葉をいただきました。
定期点検だからこそ発見できた重要な不具合。もしもファンベルトが走行中に切れていたら、大きなトラブルに発展していた可能性があります。私たちとしても定期点検の重要性を改めて実感いたしました。